UT Haruki Murakami

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 先日、数年ぶりに服を買った。もしかしたら10年ぶりくらいかもしれない。もちろん下着や靴下、スーツなど、日常的な衣類は定期的に買っている。10年ぶりというのは「この服ほしい!」という服のことだ。

 誰しもファションには興味を持つもので、自分は大学3年の頃がピークだった。渋谷や下北沢を歩きまわり、ジャケット、靴、シャツなど、バイトで稼いだお金の多くをつぎ込んでいた。しかしそれも一瞬、ほどなくして興味を失った。以来、とりあえず着れればよいという心境で、高校時に購入したシャツを筆頭に、もう何十年も着ている服なんてのもある。種類も少ない。

 というわけで、私服は上から下まで全体的にくたびれて色あせている。恥ずかしいという気持ちはほとんどなく、ヨレヨレで新宿でも池袋でもどこへでも行ける。家族はもう完全にあきらめたようで、一緒に歩くのを避けているようだ。

 そんな自分が今回購入したのは、村上春樹とユニクロのコラボTシャツ。全8種類で、見た瞬間に「これはほしい!」と一目惚れ。自分にはかなり珍しい衝動買いだった。『スプートニクの恋人』『海辺のカフカ』『1Q84』の3種類で、控えめなデザインがとても気にっている。これもボロボロになるまで10年は着ることになると思う。

 村上春樹は服とは逆に、まったく興味がなかったけど、数年前に火がついたように読み漁った。物語形式の追求、簡素な言葉を使った深い表現力、物事は決して断定できないというスタンス(あくまでも読み手に意味をゆだねる比喩的な導き方)。村上ワールドに魅了され、ほぼすべての作品を読んでいる。

 確かによい大人がみすぼらしいのはみっともないと思うし、ちゃんとした身なりはマナーであることもわかっている(つもり)。結局のところ、現新しい場所や公共の空間を避けている生き方の象徴なんだといえる。

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