今さらながら『君の名は。』

 お正月に『君の名は。』がテレビでやっていました。やはり感動・号泣。評判通りの作品でした。今さらながらですが、感想および分析です。

 まずとにかく美しい映像。背景・風景の美しさが新海監督の大きな魅力です。おそらく「描く」というよりも、実際に取材した画像をデジタル処理しているのだと思いますが、「現実世界を忠実に再現というよりも、美しく再現」しているのではないでしょうか。色や形をそのまま加工するのではなく、美しい部分のみをよりデフォルメした風景──人間がその風景に持つイメージ、こうあってほしいという風景を映像化しているという感じです。それゆえ、より美しいと感じるのだと思います。

 デジタルならでは、デジタルだからこそできる手法ではないでしょうか。実際の新宿は雑然で無機質、だけどその中で生きていかねばならぬ的なイメージの映像化は見事です。

 で、肝心の物語は人と人が出会うことの奇跡、必然、大切さ、切なさが描かれています。田舎の女の子が東京に住む男の子と入れ替わりを繰り返し、近づいていく、これで大筋は間違いありません。しかし、男女入れ替わりの視点、その間に反対側の物語も進み、かつ時系列通りに描かれていないので「えっ?これってどういうこと!?」の戸惑いの連続です。 少々タネ明かしになってしまいますが、図にするとこんな感じですかね?

 ジャンル分けするならばこれはタイムトラベルものです。構造は『バックトゥザフューチャー2』や『JIN-仁-』と同じで「過去を変えれば未来が変わる」ということです。つまり、もともとの現実Aが過去を変えたことによって現実Bになる。物語のキーになるのが、その起点はいったどこなのか? そして未来が変わった後の現実Bにおいて、未来が変わる前の現実Aの出来事、および現実Aの記憶はどうなるの?という矛盾を抱えながら生きている2人、この螺旋状の展開あるいは絡まり方、および記憶の切なさが『君の名は。』の最大の魅力と言えるでしょう。

 少々脱線しますが、タイムトラベルものの傑作がスティーブンキングの『11/22/63』。こちらは何度過去に戻っても同年同時刻から始まり、しかも一度過去を変えて現実に戻り、また過去に戻ると一度目に変えた過去および未来はリセットされる(今の現実に戻る)という設定です。ケネディ暗殺阻止に挑む物語で、現実Aと過去を変えて未来が変わる、現実Bが泣けて泣けてしょうがいないという名作です。

 以上、俺はわかってるぜ!的に書いていますが、上記は『君の名は。』小説版を読んでわかったことです。小説版は映画で省略というか描かれていなかった部分が補足されており、攻略本的な感じで「なるほどね」という感じでした。

 そんなわけで、青春っていいなって思いました。10代、20代の青春時代の人にぴったりの映画です。

 同時に自分にとっては過ぎ去った日々であり、少々感傷的になってしまいましたが、それ以上に何かを作り出すことの素晴らしさ、自分も何かを生み出していきたい、と強く思うことができました。

 最後に、宮崎監督の後継者は深海監督なのか?について。後継者というよりは、次世代のアニメを背負う人物なのだと思います。そもそも2人は決定的に違う。宮崎監督は王道の果て、深海監督は妄想の果てに辿り着いた作品という印象で、現代において前者は説教臭さく感じてしまい、後者は共感を呼ぶのだと思います。

 

追伸

1年以上間があいてしまい申し訳ありません。今年はまめに更新していきたいと思います。