運転免許合格顛末記

 2015年12月28日10時30分付近、ついに念願の運転免許を取得することができた。モニターに試験番号「382」を見つけたときは、近年ベスト1の感動で思わず泣きそうになってしまった。苦節約20年、費用は約60万円(教習所2回分)、当日の模様を中心に、その道のりをレポートしたい。

なぜ12月28日だったのか

 教習所を卒業したのが今年の1月上旬。1度目の教習期限の失効から約20年、周囲からの苦情、怒りが限界に達し、齢39にして、再び教習所に通い始めることになった。教官に「やけに運転慣れているね。免許取るのは初めて?」などと、何度も怪しまれつつ(その昔、卒業したけど試験受けられなかったという事実はひた隠し。「ええ、まあ」などと曖昧な返事で切り抜けた)、土日だけの教習で、期限ギリギリ約1年をかけて卒業することができた。ここまでは前回と同じ。

 そしてここからも、前回と同じ道を辿ることになる。試験場はお役所なので土日祝はやっておらず平日のみ。いくら忙しいといっても、向こう1年のうちに1日くらい休みとれんだろと思っていたが甘かった。春が来て夏になり、秋がきてそして冬。あっという間の1年で結局夏休みなし、結局12月まで皆勤賞で働いてしまった。もちろん、この間運転免許のことはつねに頭にあった。が、現実は半休すらも取得できない有様だった。嗚呼無情。

 周囲には「必ず行く」と宣言していたが、心の片隅では「もうだめかも」とちょっとあきらめていた。最悪の結果になるだろうと。そんな敗色ムードが漂う冬のある日の朝礼で、年末の予定が発表になった。今年は12月28日(月)が「仕事納め」か──その瞬間に「月曜日午前中は比較的ヒマで、前週に前倒してしておけば、半休なら可能。しかも仕事納めということで、突発事項が発生する可能性は限りになくゼロに近い。ここしかない!」素早く試験場の日程を確認すると、年末年始休暇は12月29日(火)から。「チャンスはここしかない!」ボルテージは一気に高まり、妙な緊張感に包まれた。期限ギリギリ、年明けに会社を休むことはほぼ無理。したがってまさに一発勝負、失敗は絶対に許されない。仕事ではほぼ毎日追いつめられているが、ここまで個人的に切羽詰まる状況に追い込まれたことはない(全部自分のせいだけど……)。一人ハードボイルドの世界に突入し、一戦必勝の覚悟。試験は学科のみとはいえ、教習所を卒業して1年近く経過しているわけで、内容はほぼ忘れている。というわけで、急いで書店に行き問題集を購入。通勤の行き帰りにひたすら問題を解き、答えを暗記していった。そして最後の土日はひたすら勉強。日曜日は必要な書類、試験場の場所、時間を一通り調べて、来るべき運命の明日に備えていった。

試験問題について

 学科試験の合格点は100点満点中90点以上。けっこうハードルは高いが、問題に慣れてくると「10問は間違えられる=10問は知らない内容でも大丈夫」という具合になってくる。①常識で判断できる問題②範囲、速度など、数字を含めた交通ルールを聞いてくる問題③1と2の合わせ技、いわゆる引っかけ問題の3種類で構成されていて、重要というか得点源になるのは②で、つまりどれだけ暗記できるかにかかっている。国語の問題を解くのとは逆に、決して意味を考えてはいけない。厳密に読み込むと「そうとも言えないのでは?この場合は含まれないのか?」などと、けっこう突っ込みどろが多くて、「正」とも「誤」とも判断がつかなくなってしまう。50分と時間もないのでキーになる単語と数字を目で追い、瞬間的に「正」「誤」を判断していくのがよいと思う。

 だが、やっかいなのは単語にしろ数字にしろ、似た内容が多いことだ。短期間でやろうとすると、途中で「あれっ? 1メートルだっけ、5メートルだっけ? 左折可だっけ? 3秒前だっけ?」と大混乱に陥る。WEB上にいくつか存在する模擬試験サイトも活用したが、これも錯綜のもとになる。同じ答えだとしても、制作者によって微妙に問題の文言や焦点の当て方が異なっているから、前述の「意味」の深みにはまってしまい、「正」と「誤」の判断に迷ってしまう。

 やはり問題数をこなすよりも、最後に頼りなる、というより覚えるべきは教本だ。数字、ルールの暗記はもとより、「原則として」とか「〜の場合は」とか「〜以外は」などといった、「意味」を決定づける曖昧な言葉遣いも含めて暗記してしまえば間違いはない。ちなみに私の場合は問題集で間違えた問題の解説を読み、その部分を教本で確かめるというやり方だった。

 と、もろもろ分析してみたが、実際はプレッシャーの中、疑心暗鬼の中ギリギリ限界まで詰め込んだというのが実情だ。

江東試験場@午前の部

 そして12月28日。試験は午前・午後の部がありそれぞれ先に適正検査が行われ、その後学科試験。午前は8時30分から到着順に適正検査、9時15分から学科試験開始というスケジュールだ。落ち着いて試験に挑むべく、5時に起床して7時前に地下鉄に乗り、東陽町に着いたのは7時30分。いくらなんでもはやすぎると思いつつ試験場に向かったが、すでに長い行例ができていた。誰しも考えることは一緒で、免許更新や新規取得は年内中、年内最後のこの日までに済ませてしまいたい、というわけだ。学生、社会人、老若男女、あらゆる人々が見受けられた。試験に加え師走中の師走、さらにこの大行列ということで、ピリピリムード満載だ。

 行列は次第に長くなり、かなり広い建物内は人で溢れかえるほどになってしまった。申請手続き開始時間がはやめられ、人の波が動き出す。しかし、そこは東京都公安員会管轄ということで、過剰とも思われる数の職員(警察官?)が適切、的確に誘導していく。ここから先はほぼベルトコンベア式に、受験料納付、適正検査(15秒くらいで終わった)、3Fへ移動、申請書類チェック、学科試験説明、その後の説明が行われ、極めて一方的に、有無を言わせず、お役所的に進んでいった。

 その中で気になったのが「合格者は前のモニターで発表。自分の受験番号があった人はそのまま残って、なかった人は退出してもらいます」という勧告。ほぼ公開処刑だ。通常落ちた人は午後の試験も受けることが可能なのだが、今日はいつになく人が多いので、それはできないということが冷静に告げられた。この展開はキツい。不合格になったら、またここに来るために仕事を調整する気力も、お正月返上で勉強をする気力もない。落ちたらもう免許はあきらめるしかない、とマイナス思考に支配された。

 9時10分付近、問題用紙を開いていよいよ試験開始。判断に迷う問題はメモ欄にその番号を記入しながら、進めていった。約30分でマークを終えることができ、グレーの問題は10問。仮にそれをすべて間違えたとしても、90点でギリギリ合格だ。約10分でその10問を改めて読み込み回答を修正して、最終的に保留となったのが1問のみとなった。というわけで自分の中では勉強の成果があったと思いたい。残りの10分ですべての回答をざっとチェックして、あっという間に試験時間の50分が終わってしまった。

合格の先に見えたものとは?

 終了から約20分後に合格発表があった。教室には120人ほどの受験生がいて、10人くらいが不合格だった。過酷な現実が降り掛かってきた一瞬だ。でも大丈夫。君たちには次がある。頑張って勉強すればきっと合格できる(自分は合格したので、上から目線モードになりやすい)。そして教官がまた滔々と免許交付までの流れを説明。安堵感からほぼ放心状態だった。

 東陽町駅までの帰り道、運転できるうれしさよりも、枷が外れた開放感に満たされる。教習所からカウントすると、都合2年間も精神的に拘束されていたわけだから。運転免許は学生時代に取得するに限る。そう結論付けざるを得ない展開、結果だった。

 とりあえず教本と参考書を本棚の奥に入れよう。そして初心者マークを袋から取り出そう。ようやく終わった。2015年、悪いことばかりじゃなく、よいことも確かに存在していた証明だ。